信用金庫のガバナンス構造とはどのようなものか?
2019/01/24
文責:山田佳美
日本では預貸業務を主な業務とする金融仲介機関には銀行の他に協同組織金融機関が存在し、その一つが信用金庫である。信用金庫は会員の相互扶助を目的とした非営利の法人である。一定の条件を満たす個人または法人が信用金庫に出資金の申し込みを行い、信用金庫が承諾した場合に会員になることができる。この会員の代表者により総会または総代会が構成されることになる。なお現在、ほぼ全ての信用金庫が総代会を行っている。総会または総代会は理事・監事の選任等の重要事項を決議する最高意思決定機関であり、信用金庫の所有者の代表として、経営者である理事会を牽制する機能を有するのである。
しかし、総会または総代会のメンバーは、理事会が委属した選考委員会により候補者が選ばれ、理事長が所定の手続きを経て委嘱する。そのため、総会または総代会による理事会(経営者)のコントロールは機能しにくい。また、理事会について職員出身の理事が理事会の多数を占めているということもあり、ガバナンスが十分に機能していない可能性がある。家森・冨村(2008)は理事会へのガバナンス機能として監事の役割が大きくなりつつあり、近年では監事の存在が保守的な経営を促していることを示している。茶野・筒井(2017)は監事を積極的に登用している信用金庫ほど効率性が高いことを示している。また、外部出身者が理事会メンバーに加わっておらず、理事全員が職員出身の理事である信用金庫は効率性が低いことも示している。
ガバナンスの視点から、理事会の規模に関する研究を行ったのが家森・冨村・播磨谷(2008)である。彼らは、資産規模や貸出規模が大きい信用金庫ほど、理事会の規模が大きいことを示唆した。一方、理事会の規模が信用金庫の収益性に与える影響については統計的に示唆されなかった。
関連キーワード:金融仲介機関、信用金庫
参考文献
茶野努・筒井義郎. 2017.「信用金庫の従業員主権的なガバナンス構造は効率性にどのように影響するか」『金融経済研究』39,1-14.
家森信善・冨村圭・播磨谷構三. 2008. 「協同組織金融機関のガバナンス改革 ―信用金庫の理事会規模と経営パフォーマンス―」RIETI 08 -J-044.
家森信善・冨村圭. 2008. 「信用金庫のガバナンスと役員構成―非常勤理事と監事の役割の比較を中心に―」『生活経済学研究』28,15-25.
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