専門家の助言は個人投資家の投資リターンに影響を与えるのか?

専門家の助言は個人投資家の投資リターンに影響を与えるのか?

2019/01/24

文責:顔 菊馨

 専門的なファイナンシャル・アドバイザーの役割は、十分な金融知識を持っていない個人投資家に対して、ポートフォリオの歪みを是正し、リスク性資産への投資によって効率よくリターンを獲得するよう、助言することにあるとされている。金融機関からの助言や金融機関への依存度が、個人投資家の行動にどのような影響を与えるかを分析した研究として、Hackethal et al.(2012)とKramer(2012)が挙げられる。

 Hackethal et al.(2012) は、銀行系または独立系のファイナンシャル・アドバイザーから助言を得た投資家と、どちらの助言も得ず、自分で資産運用する投資家の特徴、および投資パフォーマンスを、ドイツの大手ブローカーおよび大手銀行の持つデータを用いて比較検証した。その結果、助言を求める傾向が強いのは、中高年の富裕層で投資経験の長い女性投資家であることを示している。また、銀行系または独立系のいずれかのファイナンシャル・アドバイザーから助言を受けた個人投資家のポートフォリオの方が自分で資産運用をする投資家のそれよりリスク調整後リターンは劣後することを示している。この傾向は、銀行系からの助言を受けた方が、独立系からの助言を受けた場合よりも顕著である。これは、助言を受けた投資家は頻繁に取引を行うため取引コストが高くなることに起因しており、助言者のインセンティブ(取引額に応じたコミッション)と整合的である。

 これに対し、Kramer(2012)は、銀行から助言を受けた投資家と自分で資産運用する投資家とを比較し、リスク、リターン、資産構成など、様々な面において、助言の効果がどう現れたかについて、オランダのデータを用いて実証し、銀行からの助言はリターンの向上にはつながらないが、分散投資によるリスク削減に資することを示している。これは、助言を受けた投資家のポートフォリオには、株式よりも、投資信託などの複合的な金融商品が多く組み込まれていることに起因している。

 

関連キーワード:個人投資家、ポートフォリオ

 

参考文献
Hackethal, A., Haliassos, M., and Jappelli, T. 2012. Financial advisors: A case of babysitters?.Journal of Banking & Finance 36(2), 509-524.
Kramer, M. M. 2012. Financial advice and individual investor portfolio performance. Financial Management 41(2), 395-428.

 

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