非伝統的金融政策が銀行貸出に与える影響は?

非伝統的金融政策が銀行貸出に与える影響は?

2022/03/31

文責:安田行宏

 世界金融危機により非伝統的な金融政策が実施された。特に、震源地である米国における大規模資産買入(LSAP)が銀行行動にどのような影響を与えたのかの評価は重要である。Rodnyansky and Darmoubuni (2017)は、銀行が保有する住宅ローン担保証券が銀行間で大きく異なることを利用して、非伝統的な金融政策の効果を検証している。具体的には、2008年第一四半期時点において、銀行の持ち株会社レベルで見て、対総資産比率でMBSの保有が多い上位25%の銀行(トリートメント)と下位25%の銀行(コントロール)を金融緩和期前後で比較するDifference in Differences(DID)の分析を行っている。

分析の結果、いわゆる量的緩和のQE1とQE3の時期において、銀行貸出が前者3%程度、後者では2%程度増加することを実証的に確認している。一方でQE2においてはその結果は見いだせないものの、この時には財務省証券の購入のみで、MBSが購入対象となっていないことと整合的な結果であると論じている。また、Rodnyansky and Darmoubuni (2017)は、その効果のチャネルについて、QE1においては、MBSの価格上昇に伴う銀行の純資産が増えることで貸し出し余力が増加するチャネル(net worth channel)が機能した一方で、QE3においては、MBSの流動性が高まり、銀行は準備預金とスワップすることで貸し出しが増加する流動性チャネル(Liquidity channel)が機能したことを追加検証で論じている。なお、今回のnet worth channelは、帳簿上には反映されない時価の増加に伴うチャネルのため、Brunnermeier and Sannikov(2014)は、ステルス資本増強(stealth recapitalization)と呼んである。

これに対して、Chakrabory et al.(2020)は、財務省証券の購入とMBSの購入を区別し、金融緩和の時期の違いを四半期ダミーなどでコントロールするなど、より詳細に分析するとともに、企業の投資などへのリアル・エフェクトにまで射程を広げて検証している。分析の結果、モーゲージ貸付は増える一方で、企業の投資が減少する副作用を伴っていること、一方で、財務省証券の購入はおおむね貸出に大きな影響を与えていないことを実証的に確認している。

 

関連キーワード:大規模資産買入、量的緩和、流動性チャネル、ステルス資本増強

 

Brunnermeier, M. K. and Sannikov, Y. (2014) “A macroeconomic model with a financial sector.” American Economic Review 104:379-421.

Chakraborty, I., Godstein, I. and MacKinlay, A. (2020) “Monetary stimulus and bank lending.”  Journal of Financial Economics 136, pp. 189-218.

Rodnyansky, A. and Darmouni M.O. (2017) “The effects of quantitative easing on bank lending behavior.” Review of Financial Studies, v30, pp.3858-3887.

 

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