ポストコロナにおける金融支援策の論点整理~日本経済活性化のための新陳代謝の促進に向けて~
2023/12/04
<要約およびポイント>
◼ コロナ禍の金融支援策は効果が大きい一方、利用先企業に問題がある恐れ
― いわゆるゼロゼロ融資によって銀行貸出が急増した
― 倒産を抑制した一方、休廃業・解散も増加した
― いわゆる支払い能力が低いと考えられる窮境企業ほど利用した
― ゾンビ企業が増加する恐れがある
◼ ポストコロナにおいて経営改善支援・事業再生を効率的に行う必要があり
― 事業の継続価値>清算価値に基づき判断すべきである
― 地域金融機関、信用保証協会の役割は大きい
― 新陳代謝の活性化の観点も重要である
◼ 経営者保証によって退出コストが高まっている
― 経営者個人の破産を忌避するため早期の事業再生の遅れを招く恐れがある
― 経営者保証に関するガイドラインの利用は増加傾向にある
― 経営者保証改革プログラムによる一層の推進が期待される
◼ 再生支援者数の数が不足する恐れがある
― 中小企業活性化協議会の対応キャパシティには限界がある
― 認定経営革新機関の一層の活躍のためにも早期の経営改善がカギとなる
◼ 政策介入には何らかの「市場の失敗」があることが原則であり、過度な支援は民間の活力を失う恐れがある
一橋大学大学院経営管理研究科 教授
安田 行宏
本ウェブサイトは、一橋大学大学院経営管理研究科とみずほ証券の共同研究の成果として執筆された論文を掲載したものです。本ウェブサイトは、金融論・ファイナンス理論の分野で注目されている研究テーマや主要な先行研究に関心をお持ちの方の学習・研究の一助となることを専らの目的としています。本ウェブサイトは、一橋大学大学院経営管理研究科が運営しています。