バブルと取引量

バブルと取引量

2020/04/28

文責:柳樂 明伸

 インターネットバブルや住宅バブルなど過去のバブルの特徴には、急激な価格の上昇と価格上昇時の取引高の増加がある。バブルの発生の説明の一つに将来価格が上昇するという期待から価格がファンダメンタル価値から乖離するという合理的バブルの説明がある。しかし、合理的バブルの下では、価格がファンダメンタル価値から離れることが説明はできるが、価格上昇時の取引高の上昇は説明できない。

 Scheinkman and Xiong(2003)では、こうしたバブルの特徴を、自信過剰によって、投資家のファンダメンタル価値に関する不一致(Disagreement)が生じることから説明できるとしている。 自信過剰な投資家がリスク資産について2つの異なるシグナルを受け取っているとき、あるグループの投資家は片方のシグナルを信じ、別のグループの投資家はもう一方のシグナルを信じると仮定する。このとき、投資家の自信過剰程度によって、投資家間で意見の不一致が発生し、その度合いは時間によって変化する。不一致の度合いが時間によって変化することによって、投資家に将来より楽観的な投資家が現れたときに高値で売り切ろうという投機的な需要が発生する。こうした投機的な需要によって価格がファンダメンタルズから乖離する。また、意見の不一致の度合いがスイッチすることにより、取引が行われるため、高い出来高が発生するとしている。

 Barbaeris et al.(2018)は投資家の外挿バイアスとシグナルの受け取り方が時間によって変動することによって、上述のバブルの特徴を説明しようとしている。彼らは、外挿バイアスによって、投資家が過去の価格の動きから将来の期待を形成するとき、キャッシュフローに大きなショックがあったときには、価格がファンダメンタル価格から乖離することを示している。これは合理的な投資家が存在し、空売り制約がない場合であっても発生する。その理由は、合理的な投資家が外挿投資家の行動を予想して、価格が今後も上がり続けると予想するのであれば、さらに価格が上昇したときに売ろうと考え、裁定取引を行わないためである。また、資産が過大評価されているのか、今後も上昇し続けるのかのどちらを外挿投資家が重視するかが時間によって変化(”wavering”)するとき、弱気な投資家と強気な投資家との間で取引が行われる。それによってバブル期の高い出来高が発生することを示している。Scheinkman and Xiong(2003)のモデルとの違いは、投資家間の意見の不一致が内生的に決まっていることでる。

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参考文献

Scheinkman, J. A., and Xiong, W. (2003). Overconfidence and speculative bubbles. Journal of political Economy, 111(6), 1183-1220.

Barberis, N., Greenwood, R., Jin, L., and Shleifer, A. (2018). Extrapolation and bubbles. Journal of Financial Economics, 129(2), 203-227.

 

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