バリュー効果の分解
2020/04/28
文責:柳樂 明伸
バリュー効果は、割安株のリターンが割高株のリターンに比べて大きいというアノマリーであり、このアノマリーは数多くの期間や国において観測されている。このアノマリーを説明する理論研究と実証研究が多くなされている。例えば、Zhang(2005)は投資資産価格理論(Production based asset pricing theory)によってバリュー効果を説明している。Zhang(2005)は設備投資が非可逆的であったり、可逆的であってもコストがかかったりする場合には、景気悪化時にはその影響を強く受けるバリュー企業のリスクが大きくなるため、バリュー効果が発生することを示している。このほかにも、バリュー効果が消費リスクやキャッシュフローの変動をとらえているとし、リスクベースのバリュー効果の説明がなされている。Golubov and Konstantinidi (2019)は簿価時価比率を複数の要因に分解することによって、これらの理論的・実証的な要因ではバリュー効果の発生を説明しきれていない可能性を示している。
Rhodes-Kropf et al. (2005) は株価純資産倍率(Market-to-Book、M-B)をファンダメンタル価値(Value)に用いて、Market-to-Value(M-V)とValue-to-Book(V-B)の2つの要因に分解し、さらに、M-Vを企業特有の要因(個別企業の株価がその時点のファンダメンタル価値からどの程度離れているか)と産業特有の要因(長期のファンダメンタル価値とどれだけ離れているか)の2つに分解し、株価純資産倍率を合計3つの要因に分解している。
Golubov and Konstantinidi (2019)はこの関係を株式リターンとの関係に応用している。彼らは簿価時価比率をM-VとV-Bの2つの要因に分け、過去観測されているバリュー効果に対して、どちらの要因のインパクトが大きいかを検証している。その結果、M-Bの大きさで分位したときのヘッジポートフォリオの時価加重平均リターンは0.59%/月であるのに対して、M-Vは0.43%/月となり、バリュー効果の大半はM-V、特に企業特有の要因によって引き起こされ、V-Bは将来のリターンと有意な関係を持たないことを示している。また既存の研究で説明されているバリュー効果の要因(CFリスク・消費リスク・投資特殊的技術ショック・固定資産の影響など)はV-Bと相関があり、M-Vの要因とは相関が小さく、M-Vの要因影響があるのは裁定の限界や過剰反応であることを示している。
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参考文献
Zhang, L. (2005). The value premium. The Journal of Finance, 60(1), 67-103.
Rhodes–Kropf, M., Robinson, D. T., and Viswanathan, S. (2005). Valuation waves and merger activity: The empirical evidence. Journal of Financial Economics, 77(3), 561-603.
Golubov, A., and Konstantinidi, T. (2019). Where is the risk in value? evidence from a market-to-book decomposition. Journal of Finance, Forthcoming.
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