機能する取締役会改革・失敗する取締役会改革

機能する取締役会改革・失敗する取締役会改革

2020/04/28

文責:今仁 裕輔

 1992年に英国における取締役改革としてCadbury Reportが策定されて以降、現在までに多くの国で取締役改革が行われてきた。取締役改革の細部は国ごとに異なるが、1)取締役会の独立性の向上、2)監査委員会の独立性の向上、3)CEOと取締役会議長の分離など、より実効的な取締役会による経営陣の監督を通して企業価値の向上を目指すという目的が掲げられている。しかしこれまでに実施された取締役会改革には、実際に企業価値向上という目的が達せられたケースも存在すれば、反対に企業価値低下をもたらしたケースも存在する。

 Dahya & McConnell(2007)は、英国のCadbury Reportが企業価値向上に寄与したとの分析結果を提示している。この分析では、Cadbury Reportで求められている「独立社外取締役3人以上の選任」と「CEOと取締役会議長の分離」に焦点を当てており、「独立社外取締役3人以上の選任」は販管費の効率化を通じてROAに正の影響を与えたことを示している。ただし、「CEOと取締役会議長の分離」とROAに有意な関係はなかった。反対に、取締役会改革が企業価値低下につながったことを示す分析も存在している。Duchin, Matsusaka, & Ozbas(2010)は米国で2003年から施行されたNYSENasdaqの上場規定を対象に分析を行っている。2003年からの上場規定により、NYSEまたはNasdaqに上場している企業は、取締役会の過半数を独立社外取締役とすることが求められるようになった。分析の結果、上記の制度変更は企業価値・企業収益の減少をもたらしたことを示している。

 上記の2つの研究からも分かるように、各制度変化が企業に与える影響には差異が見られる。その原因を特定しようとした研究としてはFauver, Hung, Li, & Taboada(2017)が挙げられる。彼らは制度ごとに与える影響が異なる理由として、ルールベース・アプローチかプリンシプルベース・アプローチかといった制度自体の特性に起因すると仮説を立てている。41カ国の取締役会改革を対象に分析を行った結果、ルールベース・アプローチではなくプリンシプルベース・アプローチの制度を採用している場合には企業価値向上につながる傾向があることを示した。

関連キーワード:コーポレートガバナンス、ルールベース・アプローチ、プリンシプルベース・アプローチ、取締役会

参考文献

Dahya, J., & McConnell, J. J. (2007). Board Composition, Corporate Performance, and the Cadbury Committee Recommendation. The Journal of Financial and Quantitative Analysis, 42(3), 535–564.

Duchin, R., Matsusaka, J. G., & Ozbas, O. (2010). When are outside directors effective? Journal of Financial Economics, 96(2), 195–214.

Fauver, L., Hung, M., Li, X., & Taboada, A. G. (2017). Board reforms and firm value: Worldwide evidence. Journal of Financial Economics, 125(1), 120–142.

 

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