社外取締役が機能するには

社外取締役が機能するには

2020/04/28

文責:今仁 裕輔

 近年のコーポレートガバナンス改革の特徴として、個別企業の事情を考慮した上で各企業にコーポレートガバナンス体制を選択させる「コンプライ・オア・エクスプレイン」が採用されていることが多い。この制度の背景には、企業ごとに最適なコーポレートガバナンスの体制は異なるという考えがある。

 Coles, Daniel, & Naveen(2008)は取締役会構成と企業価値の関係について、主に事業の複雑性の観点から実証を行っている。社外取締役から得られるアドバイスをより必要としている企業特性として、企業規模が大きい・負債比率が高い・多角化企業であるといった点を指摘し、これらを事業の複雑性の代理変数としている。こうした事業の複雑な企業では、社外取締役人数と企業価値に正の相関が存在し、反対に事業が複雑でない企業では負の相関が存在するという仮説を提示し、これらの仮説を支持する実証結果を報告している。

 Duchin, Matsusaka, & Ozbas(2010)は社外取締役の情報獲得コストをベースに分析を行っている。社外取締役によるモニタリングあるいはアドバイスは企業固有の情報を得ることで効果的に行うことができると仮定し、社外取締役が経営者以外の情報源から企業情報を容易に入手ができるのであれば、社外取締役は企業価値に正の影響を与えるとの仮説を提示している。実証の結果、社外取締役は、企業情報を容易に獲得できる企業に対しては企業価値に正の影響を与え、企業情報の獲得が困難な企業に対しては企業価値に負の影響を与えることが示されている。

 上記2つの分析は企業特性ごとに社外取締役の有効性が異なることを実証している。よりマクロに、産業の競争度に焦点を当てた分析としてChhaochharia, Grinstein, Grullon, & Michaely(2016)が挙げられる。競争の激しい産業では、経営者の裁量的な行動の余地が少ないことから、社外取締役によるモニタリングの重要性は低いと考えられる。よって競争の激しい産業よりも、より寡占状態に近い産業に属する企業の方が、社外取締役増加による便益を受けられるとの仮説を提示し、仮説を支持する実証結果を報告している。

関連キーワード:コーポレートガバナンス、社外取締役、コンプライ・オア・エクスプレイン

Chhaochharia, V., Grinstein, Y., Grullon, G., & Michaely, R. (2016). Product market competition and internal governance: Evidence from the Sarbanes–Oxley Act. Management science, 63(5), 1405–1424.

Coles, J. L., Daniel, N. D., & Naveen, L. (2008). Boards: Does one size fit all? Journal of Financial Economics, 87(2), 329–356. https://doi.org/10.1016/j.jfineco.2006.08.008

Duchin, R., Matsusaka, J. G., & Ozbas, O. (2010). When are outside directors effective? Journal of Financial Economics, 96(2), 195–214.

 

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