企業によるソーシャルメディアの活用がもたらす経済的効果
2020/04/28
文責:日下勇歩
企業がTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを通じて情報開示を行うことを目にする機会が増えたかもしれない。このような企業によるソーシャルメディアの活用は、いくつかの経済的効果を生じさせている可能性がある。
1つめに、投資家間の情報の非対称性を緩和させることである。投資家間の情報の非対称性が深刻であるほど、株式の売買は行われにくく、株式の流動性は減少する可能性がある。Blankespoor et al.(2014)は、米国のハイテク産業を対象として、企業によるTwitterの活用と投資家間の情報の非対称性の緩和との関係について分析を行っている。Twitter上で文章を投稿することによる情報の非対称性を緩和させる効果は、とりわけ、投資家からの注目を集めにくいような企業において顕著であることが明らかにされている。
2つめに、企業に関する他の情報源へのアクセス数を増大させることである。Wolfskeil(2019)は、Twitter上で投稿された利益公表に関する文章の影響度が大きい(文章の投稿数、フォロワーの数、Retweetの平均数をそれぞれ用いて影響度に関する指標を作成している)ほど、企業の財務報告に対するインターネット上でのアクセス数が多いことを明らかにしている。この結果については、企業がTwitter上で文章を投稿することで、ファンダメンタルな情報の収集がより行われている可能性があると解釈されている。
3つめに、バッドニュースがもたらす影響を緩和させることである。Lee et al.(2015)は、製品のリコール問題(バッドニュース)を対象として、ソーシャルメディアの活用が企業に純便益(net benefit)をもたらすかどうかについて分析を行っている。ソーシャルメディアの活用により、適時に企業側のメッセージを伝達することが容易となることで、企業の評判への悪影響が軽減される可能性がある。その一方で、バッドニュースがより広まることを通じて、企業の評判や将来の売上高に悪影響が及ぶ恐れもある。実証分析によると、ソーシャルメディアの活用により、全体的には、製品のリコール問題の公表に伴う負の株価反応が縮小されることが明らかにされている。ただし、ソーシャルメディアの種類(特徴)によって、そのような効果に強弱があることを示唆する結果も得られている。
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参考文献:
Blankespoor, E., Miller, G. S., and White, H. D. (2014). The role of dissemination in market liquidity: Evidence from firms’ use of Twitter™. The Accounting Review, 89(1), 79-112.
Lee, L. F., Hutton, A. P., and Shu, S. (2015). The role of social media in the capital market: Evidence from consumer product recalls. Journal of Accounting Research, 53(2), 367-404.
Wolfskeil, I. (2019). Tweeting in the dark: Corporate tweeting and information diffusion. ASSA 2020 Annual Meeting.
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