上場していることは投資にどのような影響をもたらすか?

上場していることは投資にどのような影響をもたらすか?

2019/01/24

文責:安田行宏

 Asker et al. (2015) は、上場していること(Listing status)は経営者にショートターミニズムのプレッシャーを与えるため、長期的な視点にたった(実物)投資が阻害される可能が考えられることを論じている。その上で具体的に、非公開企業 (private firms) を公開企業 (public firms) に対する仮想現実のベンチマーク(参照点)として用いることでショートターミズム(Short termism)の有無の検証を試みている。2002年から2010年の期間における米国企業を対象に、非公開企業と公開企業の設備投資の対総資産比率を比較し、前者の方が平均的に高いことを実証的に示している。経済的なインパクトとしては、前者が7.5%であるのに対して、後者が4.1%に留まることを示している。企業規模と業種に基づきマッチングしたサンプルのケースにおいても、前者は平均して6.8%であるのに対して、後者は3.7%という結果を得ている。

 Stein (1989) では、企業の過小投資の程度は、一株当たり利益に対する株価の感応度に依存することが理論的に示されている。ここでいう株価の感応度とは、投資家による企業の将来利益に対する期待が現在の利益水準の変化に対してどのくらい反応するかの程度のことを指す。したがって、この感応度が高いほど、経営者は投資家の期待に影響を与えようとするインセンティブが高いことが示唆される。Asker et al. (2015) は、前述の分析に加えて、これと整合的な実証結果が得られていることも示している。

 他方で、Gilje and Taillard (2016) は、米国の天然ガス産業における74670件のプロジェクトレベルの投資の分析を行い、投資機会に対して非公開企業の方が公開企業よりも感応度が低いことを実証的に確認し、公開企業の方が外部資金に容易にアクセスができることが感応度の違いを説明できると論じている。

 

関連キーワード:公開企業、ショートターミズム

 

参考文献

Asker, J., Farre-Mensa,J., and Ljungqvist, A. 2015. Corporate investment and stock market listing: A puzzle? Review of Financial Studies 28(2), 342-390.

Stein, J. C. 1989. Efficient capital markets, inefficient firms: A Model of myopic corporate behavior. Quarterly Journal of Economics 104, 655-669.

Gilje, P. G., and Taillard, J. 2016. Do public firms invest differently than private firms? Taking cues from the natural gas industry. Journal of Finance 71(4), 1733-1778.

 

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