預貸利鞘の決定要因

預貸利鞘の決定要因

2019/01/24

文責:山田佳美

 金融仲介機関の一つである銀行は、資金の最終的貸し手と資金の最終的借り手の間の資金のやり取りを円滑に仲介している。銀行は、多くの資金の貸し手から主に預金の形で資金を集め、集めた資金を多くの資金の借り手へ貸し出す。そのため、銀行にとって預貸業務からの収益は重要な収益源であり、預貸業務の収益性の指標の一つが預貸利鞘である。

 預貸利鞘を決定する要因は様々あり、多くの研究がなされている。例えば、Entrop et al. (2015) では、預貸利鞘の決定要因として市場の競争度、リスク回避度、コスト、金利リスクや信用リスク、貸出と預金の満期の違いから生じるリターンが存在することを示している。特に、金利リスクと貸出と預金の満期の違いから生じるリターンについては、金融仲介機関が行う満期変換によって生じており、このリスクとリターンが預貸利鞘に反映されていることを彼らは示唆している。

 また、銀行は投資銀行業務や投資信託や保険の窓口販売などの預貸業務以外の業務を行っており、これらの業務も預貸利鞘に影響を与える要因の一つである可能性がある。Valverde and Gernándes (2007) は、非利息収入を生む預貸業務以外の業務が預貸業務と代替関係にあること、預貸業務以外の業務によって収益が得られることによって、預貸業務以外の業務と預貸業務の関係が生じていると示している。特に、預貸業務以外の業務によって得られた収益を預金市場あるいは貸出市場における競争力を獲得するために用い、結果として預貸業務以外の業務の収益の増加が預貸利鞘を増加させることを示している。

 預貸利鞘は規制の影響も受けうる。Birchwood et al. (2017) では、銀行部門への参入障壁や情報の透明性(財務状況の開示透明性)が預貸利鞘に与える影響に着目している。参入障壁が高いほど市場の競争が妨げられ、預貸利鞘が低下することを示している。また、情報の透明性が低いほど情報の非対称性が大きくなり、預貸利鞘が上昇することを示している。

 

関連キーワード:金融仲介機関、銀行、信用金庫、情報の非対称性

 

参考文献
Birchwood, A., M, Brei., and Noel. M. D. 2017. Interest margins and bank regulation in central America and Caribbean. Journal of Banking & Finance 85, 56-68.
Entrop, O., Memmel, C., Ruprecht, B., and Wilkens, M. 2015. Determinants of bank interest margins: Impact of maturity transformation. Journal of Banking & Finance 54, 1-19.
Valverde, S. C., and Fernández, F.R. 2007. The determinants of bank margins in European banking. Journal of Banking & Finance 31, 2043-2063.

 

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