金融緩和政策は銀行のリスク・テイクを引き起こすのか?

金融緩和政策は銀行のリスク・テイクを引き起こすのか?

2019/01/24

文責:安田行宏

 いわゆる世界金融危機の経験を通じて、金融緩和政策が銀行のリスク・テイクに対して直接的に影響を与えるのか否かに関心が高まっている。より具体的には、金融政策による銀行のリスク・アペタイト(risk appetite)に対して影響を与えるチャネルを総称して、金融政策の「リスク・テイクング・チャネル(risk-taking channel)」と呼ぶ。

 伝統的な金融政策のチャネルには、金利の低下を通じて借り手企業の資金需要を喚起する金利チャネル(Interest rate channel)、金利の低下による企業の担保価値の向上が企業資金制約を緩和するバランス・シート・チャネル(Balance sheet channel)などが知られている。これらの伝統的な金融政策のチャネルは企業の資金需要を増加させる経路であるのに対して、リスク・テイキング・チャネルは銀行の資金供給を増加させる経路である。

 金融政策のリスク・テイク・チャネルの存在を実証的に明らかにしようとした論文には、Palgorva and Santos (2016)、Jimenez et al. (2014)、Ioannidou et al. (2015)などがある。例えば、Palgorva and Santos (2016) では、米国の金融緩和政策(低金利政策)を通じた銀行のリスク・アペタイトの変化が銀行のリスク・テイクを引き起こしているのかを検証している。より具体的には、米国の過去20年にわたる企業・銀行間の貸出スプレッドの決定要因の検証を通じてリスク・テイクの経路の有無を厳密に分析し、リスク・テイク・チャネルが存在することを実証的に明らかにしている。

 これらの分析の課題としては、銀行のリスク・アペタイトをどのように測定するかという点にある。例えば、Palgorva and Santos (2016)では、各銀行のリスク・テイクのインセンティブについて、SLOOS(Senior Loan Officers Opinion Survey)を使って銀行の融資担当者のリスク・アペタイトを測定している。一方、Jimenez et al. (2014)は、銀行資本などの銀行の財務データをリスク・アペタイトの代理変数を用いて測定している。

 

関連キーワード:リスク・テイク・チャネル、リスク・アペタイト、金利チャネル、バランス・シート・チャネル

 

参考文献
Jimenez、G. Ongena, S., Peydro, J-L., and Saurina,Jo. 2014. Hazardous times for monetary policy: What do twenty-three million bank loans say about the effects of monetary policy on credit risk-taking? Econometrica 82, 463-505.
Ioannidou, V. Ongena, S. and Peydro J-L. 2015. Monetary policy, risk-taking, and pricing: Evidence from a quasi-natural experiment. Review of Finance 19, 95-144.
Paligorova, T. and Santos, J.A.C. 2016. Monetary policy and bank risk-taking: Evidence from the corporate loan market. Journal of Financial Intermediation, Forthcoming.

 

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