ノイズトレーダーは市場から淘汰されるのか?

ノイズトレーダーは市場から淘汰されるのか?

2019/01/24

文責:柳樂 明伸

 Friedman(1953)の安定的投機の議論に基づけば、ファンダメンタルに基づかない投資行動をとる非合理な投資家(以下、ノイズトレーダー)は、資産価格がファンダメンタルズ価値を上回れば売却し、下回れば購入する合理的な投資家の裁定取引により市場から淘汰される結果、資産価格はファンダメンタルズ価値に収束し、この結果、ノイズトレーダーの行動は、資産価格に影響を与えないとされる。しかし、以上の議論においては、合理的な投資家は十分な裁定取引を行うことが前提となっており、この前提が満たされない場合、ノイズトレーダーが利益を獲得し、市場に生き残りつづける可能性が指摘されている。

 De Long et al.(1990)は、2期間からなる世代間重複モデルを用いて、市場に合理的な投資家と、将来の資産価格をそのファンダメンタル価値よりも高く評価する強気なノイズトレーダーが存在する時、均衡価格は、ノイズトレーダーがより強気であるほど、市場におけるノイズトレーダーの割合が大きいほど、また、ノイズトレーダーの期待の変化における不確実性が大きいほど、ファンダメンタル価格から乖離し、ノイズトレーダーの方が合理的な投資家よりも多くの利益を獲得することを示した。この結果は、ノイズトレーダーが存在することにより、ファンダメンタル価格から離れてしまうリスクが存在するため、合理的な投資家はノイズトレーダーよりもよりリスク回避的であるときには、このリスクがあることで十分な裁定取引を行えないことに依っている。

 Kyle and Wang(1997)は、自信過剰な投資家が、シグナルの分散を過小評価する結果、シグナルを過大に受け取ったと認識する場合、より多くの取引を行うようになり、そのため、自信過剰な投資家の行動がクールノー競争におけるコミットメントとして作用することで合理的な投資家の取引を制限することを示した。また、シグナルにおけるノイズの割合が大きいときや投資家の自信過剰の度合いが強いときには、合理的な投資家に比べて自信過剰な投資家が利益を獲得することがあることが示されている。

 

関連キーワード:安定的投機、裁定取引、自信過剰

 

参考文献

De Long, J. Bradford, et al., 1990. Noise trader risk in financial markets, Journal of Political Economy 98(4), 703-738.

Kyle, Albert S., and F. Albert Wang, 1997. Speculation duopoly with agreement to disagree: Can overconfidence survive the market test?, The Journal of Finance 52(5), 2073-2090.

 

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