資本市場に関する学術研究の一考察
~ミクロ的視点とマクロ的視点から~

資本市場に関する学術研究の一考察
~ミクロ的視点とマクロ的視点から~

2021/04/26

<要約>

・前半では、ミクロ的な観点から、上場していること(Listing status)が企業の財務的な意思決定にどのような影響を与えるのかに関する学術研究を概観する。後半では、マクロ的な観点から、国際資本フローに関する研究について概観する。

・株式の上場には、資金調達の選択肢の拡大、流動性の向上等のメリットがある一方で、投資家のプレッシャーによるショートターミニズム(Short termism)に陥る懸念等のデメリットもある。

・上場企業と非上場企業を比較すると、M&A を含む広義の投資、現金保有比率、資本構成、ペイアウト等の財務政策、更には利益の質等、様々な側面において違いがある。

・日本における金融商品取引法に基づく情報開示は、上場と非上場の違いを検証する上で有用である。

・国際資本フローは、資本提供国、受入国双方に、直接的、間接的に様々な便益をもたらす一方、マクロ経済や金融システムの不安定化をもたらすリスクも内包している。マクロ経済や金融システムの安定性を損なうことなく、国際資本フローの便益を享受するためには、国際資本フロー
がどのような要因で決定されるかを考察することが重要である。

・国際資本フローの決定要因の分析には、プッシュ要因/プル要因に基づいた分析が多く行われおり、そこでは、資本の急激な流出入においては、プッシュ要因が重要な役割を果たすが、その程度はプル要因によって異なることが示されている。

・このため、国際資本フローの急激な変動リスクに対しては、適切なマクロ経済政策やマクロ・プルーデンス政策のみならず、必要な場合には、資本フロー管理も有効となる。

 

一橋大学大学院経営管理研究科教授
安田 行宏

一橋大学大学院経営管理研究科教授
熊本 方雄

 

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