コロナ禍における金融支援策の論点整理
~ポストコロナの事業再生に向けて~
2021/04/26
<要約およびポイント>
■コロナ禍における中小企業の資金繰り支援策によって信用保証協会の保証付き貸付を中心に融資残高が伸びており、倒産の抑制に貢献している
- 保証債務残高は20兆円ほど増加している
- 倒産件数は抑制される一方で、休廃業・解散数は増加している
- 貸し出しの増加とともに預金も過去最高を記録している
■コロナ禍が長引くと過剰債務問題の顕在化による、バランスシート不況の恐れがある
- デット・オーバーハングによる過少投資問題が懸念される
- かつてのバランスシート調整はゾンビ企業の温存を招いた
- コロナ禍以前より、中小企業の低収益性の問題が存在していた
■ポストコロナを見据えた事業再生には、中小企業の状況に応じて、リスケ、債権放棄を伴う金融支援策が必要となる可能性がある
- 中小企業の事業再生は私的整理で行うのが現実的である
- 私的整理において中小企業再生支援協議会の果たす役割は大きい
- 債権放棄を伴う抜本的な事業の再構築は第二会社方式で行うことが多い
■緊急融資は信用保証協会の保証付きであるため、保証協会の求償権と優先条項の放棄について政策対応が必要となる可能性がある
一橋大学大学院経営管理研究科 教授
安田 行宏
本ウェブサイトは、一橋大学大学院経営管理研究科とみずほ証券の共同研究の成果として執筆された論文を掲載したものです。本ウェブサイトは、金融論・ファイナンス理論の分野で注目されている研究テーマや主要な先行研究に関心をお持ちの方の学習・研究の一助となることを専らの目的としています。本ウェブサイトは、一橋大学大学院経営管理研究科が運営しています。