モチベーション研究の新たな潮流
~向社会的モチベーションという考え方~

モチベーション研究の新たな潮流
~向社会的モチベーションという考え方~

2021/11/11

<要約およびポイント>

■向社会的モチベーションという新しい考え方が注目されている

  • 向社会的モチベーションとは「他者に恩恵をもたらすために努力しようとする意欲」のことである
  • 成員は仕事や職場で自己利益のみならず他者利益に向けても動機づけられる

 

■向社会的モチベーションは成員に好影響と悪影響をもたらす

  • 向社会的モチベーションが高い成員はパフォーマンスを向上させ、他者への援助行動や周囲との協力行動、創造的な行動を促進することが示されてきた
  • しかし近年では、向社会的モチベーションの高い成員には過重負荷や高ストレスなどの悪影響が生じ得ることも指摘されている

 

■向社会的モチベーションの成員への影響の違いは動機づけの性質差にある

  • 自己決定理論によると、モチベーションには自律的側面と統制的側面の二つがあり、自律的側面は成員に好影響を、統制的側面は悪影響をもたらすとされる
  • 日本企業の従業員を対象とした質問票調査データを分析した結果、向社会的モチベーションの自律的側面は成員の態度・行動に好影響を、統制的側面は悪影響を与えていることが確認された

 

■向社会的モチベーションの自律的側面を促進し統制的側面を抑制するマネジメントの検討が求められる

  • 向社会的モチベーションによる成員への影響に関する研究蓄積に対して、先行要因に関する研究が不足している
  • 今後は、成員の職務特性や管理者のリーダーシップ行動、組織風土などの組織マネジメント要因を解明する必要がある

 

一橋大学大学院経営管理研究科
特任講師 シン ハヨン
教授 島貫 智行

 

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