株式の期間構造

株式の期間構造

2022/03/31

文責:鈴木雅貴

 利付債の価格は、将来発生する個々の利息と元本部分に対する請求権(ストリップス債)の価格を合計することで求められる。この関係を利用して、債券の満期と利回りとの関係を示した、債券(金利)の期間構造が得られる。これと同様に、現在の株価は、将来発生する個々の配当に対する請求権(配当ストリップス)の価格を合計したものと考えることができよう。株式配当を原資産としたデリバティブの登場により、近年では配当ストリップスの価格が容易に求められるようになった。ここから、配当ストリップスの年限と期待リターンとの関係を示した、株式の期間構造を推定することが可能となっている。

 そして、この株式期間構造は平均的に右下がりであることが、Binsbergen et al. (2012)を始めとする一連の研究により明らかになってきた。すなわち、短期の配当ストリップスの方が、長期の配当ストリップスあるいは株式そのものよりも平均的なリターンが高いということである。またGormsen(2021)の分析では、株式期間構造の傾きは景気逆循環的に変動することが示された。すなわち、好景気(不景気)の時ほど、株式期間構造の傾きは小さく(大きく)なる。これらの発見は、株価自体のモーメントや動学的特徴に焦点を当ててきた既存の資産価格モデルに対して、別角度からその現実整合性の検証手段を提供することとなった。

 特に、平均的に右下がりの株式期間構造は、代表的な資産価格モデルの予想と矛盾しており、これは現在ファイナンス研究分野にとって新たな資産価格パズルの一つとなっている。そして、ここ10年程度の間、株式期間構造の要因を解明すべく非常に活発な研究が国内外で行われている(比較的最近の研究成果については、Binsbergen and Koijen, 2017を参照のこと)。今後の方向性として、株式のみならず債券の期間構造の動学的特徴も同時に説明できるような資産価格モデルの登場が期待される。

 

関連キーワード:配当ストリップス、株式の期間構造、平均的に右下がり、景気逆循環的、資産価格パズル

 

van Binsbergen, J., Brandt, M., and Koijen, R. (2012) “On the timing and pricing of dividends,” American Economic Review, 102(4), 1596–1618.

van Binsbergen, J. H. and Koijen, R. S. (2017) “The term structure of returns: Facts and theory,” Journal of Financial Economics, 124(1), 1–21.

Gormsen, N. J. (2021) “Time variation of the equity term structure,” Journal of Finance, 76(4), 1959–1999.

 

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