投資ファクター ~資産の増加した企業の株式リターンは低い?~

投資ファクター ~資産の増加した企業の株式リターンは低い?~

2019/01/24

文責:平岩 拓也

 近年、ファクター投資への関心が急速に高まっており、実務的にも学術的にも、超過リターンの源泉である様々なリスク・ファクターに注目が集められてきたといえる。その中でも、比較的新しいファクターとして、Fama and French(2015)の5ファクター・モデルに追加された収益性ファクターと投資ファクターが特に注目されている。

 投資ファクターに関して、Cooper et al.(2008)は、総資産増加率が大きい企業ほど、次期の株式リターンが小さくなることを示している。また、設備投資の増加に限らず、他の現金以外の資産の増加も株式リターンに負の影響を与えており、総資産増加による負のリターンは、これらの個別の資産増加要因による影響を除いた場合でも存在することが明らかにされている。同様に、総資産増加の要因を資金調達手段によって分解した場合、各要因のリターンへの影響をコントロールした場合でも、総資産増加によって説明される負のリターンが存在することが示されている。

 投資ファクターで説明される資産増加率とリターンの負の関係は、新古典派的な生産に基づいた資産価格理論に基づくと、収益性ファクターやバリューファクターの関係と整合的でないことが指摘されている。Kogan and Papanikolaou(2013)は、企業の既存資産による生産と新たな投資機会を分離し、新たな投資機会への設備投資に固有の生産性ショックが発生すると、設備投資と株式リターンの負の関係、バリュー株効果、収益性プレミアムを同時に発生させることを、カリブレーションによって示している。また、シミュレーション・データの実証結果が、実際のデータの実証結果と整合的であることも示している。これらの結果から、投資ファクターは、収益性ファクターやバリューファクターと背後のメカニズムを通して密接に関わっていることが示唆される。

関連キーワード:5ファクター・モデル,投資ファクター,生産に基づいた資産価格理論

参考文献
Cooper, M.J., Gulen, H., and Schill, M.J. 2008. Asset growth and the cross-section of stock returns. The Journal of Finance, 63(4), 1609-1651.
Kogan, L., and Papanikolaou, D. 2013. Firm characteristics and stock returns: The role of investment-specific shocks. The Review of Financial Studies, 26(11), 2718-2759.
Fama, E.F., and French, K.R. 2015. A five-factor asset pricing model. Journal of Financial Economics, 116(1), 1-22.

 

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