歪度と株式リターン

歪度と株式リターン

2019/01/24

文責:柳樂 明伸

 平均・分散アプローチでは、投資家はリターンの二次までのモーメント、すなわちリターンの平均と分散を考慮して投資の意思決定をすると考えられている。これを拡張し、投資家がより高次のモーメントを考慮する場合、資産価格の期待リターンがどのように決定されるのかを示したモデルとして、例えば、Kraus and Litzenberger(1976)は、投資家が三次のモーメントである歪度を考慮する場合、マーケットポートフォリオと個別資産の共歪度が資産価格リターンと負の関係を持つことを示している。

 近年では、投資家の異質性を導入したモデルを用いて、資産の固有歪度とリターンの関係を示した研究がある。Mitton and Vorkink (2007)は、二次の効用関数を持つ投資家(traditional investor)と、二次のモーメントに加えて歪度についても選好をもつ投資家(lotto investor)が存在する場合、固有歪度がリターンに影響をもたらすことを示した。traditional investorは平均と分散に基づき分散投資を行うのに対し、lotto investorは個々の資産の固有歪度が増加すると分散化を行わず、歪度の高いものへと投資するため traditional investorのみが存在するときに比べ、十分な分散化が行われない。この結果、共歪度のみならず資産の固有歪度がリターンに影響を与えることになる。また、Mitton and Vorkink (2007)は60、000人の投資家のポートフォリオを分析し、このモデルと整合的な結果が得られること、すなわち、分散化を行っていない投資家ほど、ポートフォリオの歪度が高いことや三次のモーメントを考えたときの効率的ポートフォリオは二次までのモーメントを考えたときの効率的ポートフォリオとは異なることを示している。

 また、バイアスもリターンの歪度が価格に影響を与える。プロスペクト理論によれば、人はより低い発生確率の事象を実際の発生確率よりも起こりやすいと考える傾向がある。Barberis and Huang(2008)は、これに基づき、確率加重関数を考慮した場合の資産価格のモデルを提唱している。投資家が低い確率を過大評価しているときには、投資家は正の歪度を持つ株式をポートフォリオに組み入れることによって、不十分な分散化されたポートフォリオを保有することとなる。正の歪度を持つ株式の株価は過大評価され、将来、負の異常リターンを発生させることを示している。

 

関連キーワード:プロスペクト理論,リスクプレミアム

 

参考文献
Kraus, A., and Litzenberger, R. H. 1976. Skewness preference and the valuation of risk assets. The Journal of Finance 31(4) 1085-1100.
Mitton, T., and Vorkink, K. 2007. Equilibrium underdiversification and the preference for skewness. The Review of Financial Studies 20(4), 1255-1288.
Barberis, N., and Huang, M. 2008. Stocks as lotteries: The implications of probability weighting for security prices. American Economic Review 98(5), 2066-2100.

 

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